チョコレートにはタンパク質や脂質のほか、健康維持に欠かせないビタミンやミネラルなどの微量栄養素も含まれています。また、健康効果があると知られているカカオポリフェノールなどの成分も豊富です。
当記事では、チョコレートに多く含まれているビタミンの働きやカカオポリフェノールなどの健康効果、摂取量の目安や健康によいチョコレートの選び方などについて解説します。
【基礎知識】チョコレートとは?
チョコレートとは、カカオ豆から取れるカカオマスやカカオパウダーに砂糖や乳製品などを加えて作られる菓子です。独特の香りや苦みが特徴で、そのまま食べるほか、製菓・製パンの材料としても使われています。ここでは、カカオ成分の違いによるチョコレートの種類やカカオの栄養価について紹介します。
チョコレートの種類
チョコレートはカカオ成分の含有量によって3つの種類に分けられます。中でもカカオ成分が高いため、色が濃くて苦みが強いのがダークチョコレートです。一般的にダークチョコレートには乳製品由来の成分を含みません。一方、カカオ由来の原料にミルクパウダー、砂糖などを加えて作られるミルクチョコレートは、まろやかな甘みが特徴です。また、ホワイトチョコレートはカカオ豆を加工して作られるココアバターを主に使用しているため、色が白く、甘みが比較的強いことを特徴としています。
カカオの栄養価
カカオ豆にはタンパク質や脂質、ビタミンのほか、マグネシウムなどのミネラルまでさまざまな栄養素が含まれています。特にカカオポリフェノール、テオブロミンなどはカカオ独特の栄養素です。
栄養素は加工する過程で減少してしまうため、生の状態に近いほど栄養価が高いといわれています。しかし、カカオニブやカカオパウダーを入手したり、日々の食事に取り入れたりするのは簡単ではありません。そのため、カカオの栄養を手軽に取り入れたい方はできる限りカカオ成分の高いチョコレートを選ぶとよいでしょう。
チョコレートに含まれるビタミンの種類
ビタミンはタンパク質や脂質といった主要栄養素の働きを助ける役割を持つ、健康維持に欠かせない栄養素です。ヒトの体内では作り出せないビタミンが多いため、食事などから少しずつ摂取することが大切です。チョコレートには主にビタミンB1・B2・B6、ビタミンE、パントテン酸、ナイアシンが含まれています。ここでは、それぞれのビタミンの主な働きについて紹介します。
ビタミンB群
ビタミンB1とは、ブドウ糖をエネルギーに変える際に必要となる栄養素です。また、ビタミンB2には脂質を分解してエネルギーを産生するだけでなく、健康な髪の毛や肌の維持、活性酸素の除去といった働きがあります。ビタミンB6はタンパク質の分解を助けたり、免疫機能の働きを維持したりするのに必要な栄養素です。ホルモンバランスを整える働きもあるため、女性は特に意識して摂取するとよいでしょう。
ビタミンE
強い抗酸化作用を持つビタミンEは、老化防止や美容効果のあるビタミンとして知られています。また、血行を促進するためビタミンEが不足すると、肩や首が凝ったり手足がしびれたりすることがあります。また、女性の場合は月経不順や更年期障害を引き起こすこともあるため、ビタミンE不足に注意しましょう。ビタミンEの多い食品としてはアーモンドなどのナッツ類や植物性油が挙げられます。
パントテン酸
パントテン酸はビタミンB5とも呼ばれる水溶性ビタミンの一種です。糖質や脂質をエネルギーに変える際に必要とされます。植物性、動物性を問わずさまざまな食品に含まれているため、通常はパントテン酸欠乏症になることはないでしょう。ただし、一度に多く摂っても体の中に貯蔵できないため、毎日しっかりと食事から摂取することが大切です。
ナイアシン
水溶性ビタミンのナイアシンには、脂質やアミノ酸の代謝を助ける働きがあります。また、生命活動維持に必要なアデノシン三リン酸(ATP)を産生したり、神経を保護したりする効果もあります。
ナイアシンは玄米や落花生といった植物性食品からも、鶏むね肉のような動物性食品からも摂取可能な栄養素です。また、体内で必須アミノ酸のトリプトファンから合成もできます。なお、ナイアシンが不足すると皮膚炎や下痢を発症することがあります。
チョコレートがもたらす健康効果
チョコレートは、ビタミン以外にもさまざまな健康成分を含むお菓子です。特に、近年はカカオポリフェノールやテオブロミンといった成分に注目が集まっているため、積極的に摂りたいと考えている方も多いでしょう。ここでは、チョコレートの主な2つの健康効果について解説します。
心血管系のリスク改善効果
カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールには抗酸化作用があるため、特に動脈硬化の予防効果が期待できます。動脈硬化とは、酸化したLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管壁に沈着して血管が硬くなることです。カカオポリフェノールは抗酸化作用によって活性酸素の働きを抑え、LDLコレステロールの酸化を防ぐため、動脈硬化の予防に役立ちます。また、血圧を下げたり、血液をサラサラにしたりする効果もあるため、心血管系のリスク改善につながります。
ストレス軽減や気分のリフレッシュ
カカオポリフェノールには、ストレスを和らげる効果があるといわれています。ラットを用いた実験では、カカオポリフェノールを摂取すると精神的ストレスに対する反応を抑制できることが分かりました。また、カカオ豆に含まれるテオブロミンは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンに働きかけ、気分をリフレッシュさせたりリラックスさせたりする効果もあります。チョコレートには気分を高揚させるカフェインも含まれているため、疲れを取りたいときや集中力を高めたいときにもおすすめです。
チョコレートの適切な摂取量
ビタミンをはじめとするさまざまな健康によい成分が含まれているものの、チョコレートは脂質や糖分も多い食品です。食べすぎは肥満につながることがあるため、適切な摂取量を守りましょう。
厚生労働省では、菓子・嗜好品から摂取するカロリーを1日200kcal以下に抑えることを推奨しています。商品によって異なるものの、ほかに間食しない場合は1日20〜25g程度が目安です。また、チョコレートの健康成分のうち、カカオポリフェノールは摂取後時間が経つと体外へ排出されてしまいます。健康を意識するなら1日の中で何度かに分けて少しずつ食べるとよいでしょう。
健康を考えたチョコレートの選び方
健康のためにチョコレートを食べるのであれば、カカオ成分が70%以上のハイカカオチョコレートがおすすめです。チョコレートはカカオ成分に砂糖や乳製品などを加えて作られています。カカオ含有量が低い製品は糖分や脂質が比較的多いため、食べすぎはカロリーオーバーにつながるおそれがあります。また、カカオ含有量が低いため健康効果もそれほど期待できません。
一方、健康成分を多く含むカカオの含有量が高いハイカカオチョコレートであれば、より高い効果が期待できます。また、糖分や脂質の割合が低いためカロリーが控えめであることもメリットです。
まとめ
チョコレートには、原材料のカカオ豆に由来するさまざまなビタミンやカカオポリフェノールなどの健康成分が含まれています。特に水溶性ビタミンは体内に貯蔵できないため、こまめに摂るとよいでしょう。
チョコレートには心血管系のリスク改善やストレス軽減の効果も期待できます。なお、カカオの栄養を摂取するには、特にハイカカオといわれるカカオ分の多いチョコレートがおすすめです。1日の摂取量を意識して摂りすぎに注意しつつ、毎日の食習慣にチョコレートを取り入れてみてください。