チョコレートには、鉄分や亜鉛といった各種ミネラルや、健康によい効果をもたらす成分が豊富に含まれています。一般に脂質が多いと思われがちなチョコレートですが、実は健康維持・増進に効果があるのです。今回は、チョコレートに含まれる鉄分と貧血について解説します。
チョコレートには鉄分が多く含まれている
チョコレートに使われるカカオには、ポリフェノールや各種ミネラルといった健康によい成分が多く含まれています。なかでも鉄分は含有量が多く、適切な量を摂取することで毎日の健康維持に効果的です。
ただし、チョコレートであればなんでもよいわけではありません。チョコレートにはミルクチョコレート・ビターチョコレート・ホワイトチョコレート・ダークチョコレートといったさまざまな種類が存在します。チョコレートに含まれるミネラルやポリフェノールを効果的に摂取するのであれば、ビターチョコレートやダークチョコレートといったカカオ成分の多いタイプがおすすめです。
例えば、ミルクチョコレートの鉄分量は100gあたり2.4mgで、ホワイトチョコレートの場合はわずか0.1mgほどしか含まれていません。一方、ダークチョコレートは100gあたり2mg〜3mg含まれているそうです。
そのほかにも、亜鉛やポリフェノールなどチョコレートの栄養の多くはカカオに由来するため、カカオ成分の割合が多いダークチョコレートのほうが健康につながりやすいのです。ミルクチョコレートに栄養がないわけではありませんが、効果的に栄養を摂取するのであれば、カカオ成分の多いチョコレートを選びましょう。
貧血とは
鉄分は肉類や魚介などさまざまな食材に含まれていますが、ファストフードやコンビ二弁当など現代の食生活では鉄分が不足するケースも珍しくありません。鉄分が不足することによる症状は多々ありますが、そのなかでも代表的なものが「貧血」です。
貧血とは、血液中の赤血球の数や体内の酸素を運搬するヘモグロビンの量が不足している状態を指します。こちらでは、貧血の主な症状と種類について解説します。
貧血の症状
鉄分不足で貧血を起こした場合の主な症状は、以下の通りです。
・疲労感
・顔色が悪い
・倦怠感
・動悸・息切れ
・立ちくらみ
・頭痛
・めまい
・筋肉の痙攣
上記の症状は必ずしも貧血でのみ起こるものではありませんが、多く当てはまる場合は貧血の可能性があります。また、鉄分の不足による貧血の症状を「鉄欠乏性貧血」と呼び、上記に加えて爪がもろくなったり、唇に炎症が起こったりといった症状も起こり得ます。
貧血の種類
一言に貧血といっても、発生の原因や不足する栄養素によって貧血の種類が異なります。鉄欠乏性貧血は日々の鉄分の摂取量の不足や吸収阻害によって起こりますが、そのほかにも以下のような貧血があります。
貧血の種類 |
原因 |
巨赤芽球性貧血(悪性貧血) |
ビタミンB12および葉酸の不足 |
溶血性貧血 |
自己免疫または遺伝 |
腎性貧血 |
腎障害 |
慢性疾患に伴う二次性貧血 |
慢性炎症や悪性腫瘍といった炎症 |
再生不良性貧血 |
原因不明。医薬品由来の説がある |
なお、上記の貧血の種類以外にも、加齢による生体機能の低下や、鉄分以外の亜鉛や銅といった栄養素が不足しても貧血は起こります。そのため、貧血気味だからといって必ずしも鉄分が不足しているとは限りません。なんらかの該当する症状があり、鉄分を取っても改善されない場合は病院に行きましょう。
チョコレートと貧血
ここからは、貧血の改善に効果的とされるチョコレートの栄養や、効果的な食べ方について解説します。チョコレートに含まれる鉄分は貧血に効果的ですが、それだけではありません。
貧血に役立つチョコレートの成分
貧血対策には鉄分以外にも、以下の栄養素が効果的です。
・タンパク質
・ビタミンE
・葉酸
・ビタミンB12
・ビタミンC
・亜鉛
・銅
など
上記のうち、チョコレートにはビタミンB12とビタミンC以外のすべての栄養素が含まれています。チョコレートが貧血に効果的といわれるのは、鉄分だけでなく貧血対策に役立つ栄養素が豊富に含まれているからともいえるでしょう。
貧血に役立つチョコレートの選び方
貧血対策にチョコレートを摂取する場合は、カカオ成分の低いミルクチョコレートではなく、ビターチョコレートやダークチョコレートなどカカオ成分の多いものを選びましょう。ホワイトチョコレートにはカカオ成分が全く含まれていないため、貧血対策にはなりません。近年はスーパーやコンビニでもハイカカオチョコレートが販売されています。
健康を目的としてチョコレートを購入するなら、商品のカカオ成分に注目するとよいでしょう。
貧血に役立つチョコレートの食べ方
栄養素には吸収率があります。チョコレートは多くのミネラルやビタミン類を含んでいますが、必ずしもすべての栄養を一度に吸収できるわけではありません。貧血対策や健康増進を目的としてチョコレートを摂取する場合は、一度で多量に摂取するのではなく、毎日少量ずつ摂取するのを推奨します。
また、貧血対策を目的として食べる場合は、ビタミンCやビタミンB12を含む緑黄色野菜や酸味のあるフルーツを一緒に摂取して、チョコレートだけでは足りない栄養素を補うとよいでしょう。とくにビタミンCは鉄分の吸収をよくするといわれているため、積極的に取り入れたい栄養素です。
鉄分摂取のためにチョコレートを食べる際の注意点
ここからは、鉄分摂取のためにチョコレートを食べるときの注意点について解説します。確かにカカオ成分の多いチョコレートはたくさんの栄養を含んでいますが、高カロリーです。また、過剰摂取によって健康を阻害する可能性もあるため、適量を心がけなければなりません。
チョコレートを食べすぎると貧血になる
チョコレートを食べると貧血対策になる一方で、食べ過ぎはかえって貧血を引き起こす可能性があります。チョコレートに使われるカカオにはポリフェノールの1種である「タンニン」という成分が含まれており、鉄の吸収を阻害する性質があります。
ただし、このポリフェノール自体は悪いものではなく、抗酸化作用による老化防止にもつながるといわれる成分です。そのため、食べ過ぎることでかえって健康を阻害してしまいますが、積極的に取りたい栄養素でもあります。
チョコレートを食べすぎると太る
チョコレートはカカオの割合が多いほど低カロリーですが、それでも30gあたり180kcalもある高カロリー食品です。もちろん食べ過ぎれば糖質や脂質の過剰摂取によって、肥満につながる可能性があります。そのため、健康維持や貧血対策ならチョコレートだけに頼るのではなく、普段の食生活におけるカロリーバランスも気にする必要があります。
チョコレートは朝昼晩の3食に取り入れるよりも、間食として食べる場合がほとんどです。そのため、チョコレートを摂取する際はほかの食事でカロリー摂取量を調節したほうがよいでしょう。
チョコレートを食べすぎると睡眠に影響をおよぼす
チョコレートのカカオ成分には「テオブロミン」というカフェインに近い作用を持つ成分が含まれています。そのため、夜寝る前にチョコレートを摂取すると、覚醒作用により眠れなくなってしまう可能性があるのです。
とくに、妊娠中または不眠症の方はテオブロミンやカフェインの摂取量を控えなければならないため、チョコレートの摂取には慎重にならざるを得ません。チョコレートを食べるときは、自身の体質や時間帯に注意しましょう。
即効性の高い貧血改善方法ではない
チョコレートに含まれるミネラルは貧血を改善するといわれますが、即効性があるとは限りません。そもそも栄養素の摂取による症状の改善は、毎日少しずつ摂取することで体質を少しずつよくしていくものです。早急に貧血を改善したい場合は、薬や点滴治療など別の方法をおすすめします。
チョコレートの1日の摂取量目安
チョコレートの1日の摂取量に決まりはありませんが、1日あたりおよそ25gから35g程度がよいとされています。前述したように、チョコレートはカロリーが高いため、普段の食事にプラスしてチョコレートも多量に摂取すると、肥満につながってしまいます。
また、チョコレートには覚醒成分であるテオブロミンも含まれているため、必要な栄養素をすべてチョコレートで補おうとすると、かえって健康によくありません。チョコレートを摂取する際は「普段の食事で足りない栄養を補う程度」と心がけるとよいでしょう。
鉄分豊富なチョコレートは貧血に役立つ可能性がある
チョコレートに含まれる鉄、銅、亜鉛といった栄養素は貧血に効果があるといわれます。しかし、貧血の原因が鉄分不足以外にある場合は、チョコレートを摂取しても改善は難しく、また必要な栄養素をチョコレートだけで補おうとすると、かえって貧血や肥満につながるかもしれません。そのため、チョコレートの健康効果を十分に発揮するには、適切な摂取量を心がけることが大切です。